すきなように

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第19回 太宰を聴く ~太宰治作品朗読会~ 感想

 「緊急取調室」(キントリ)をきっかけにすっかり田中哲司さんの虜になってしまったので、本日の朗読会に参加してきました。ということで、その感想をちまちまと書いてみました。走り書きで申し訳ないです。

 

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 朗読会が始まると、まず第35回 太宰治賞受賞者の阿佐さん(作品「色彩」)が登壇されたのですが、話がお上手。ほぼほぼ落ち着いて話されていましたし、途中に笑いどころも作っていて、最終的には哲司さんにプレッシャを与える「太宰治の独特な句読点の使い回しをどう表現してるのかなぁ」的な発言をされていて、思わず声をだして笑ってしまいました。

 それに対しての哲司さんの回答は「あんまり意識してませんでした(笑)」という結果に。でも、朗読中はきちんと句読点が言葉になっていたなぁと。さすがです。


▼前半「恥」

 哲司さんはグレーのスーツ姿(ジャケットあり)。小走りでぱぱっと登壇したので、思わずふふっと笑ってしまいました。
 さて「恥」の和子って、わたしにはよく分からない存在です。最初は旧約聖書の引用までして語る知的な部分を見せるのに、落ちとしては早合点というか勘違いというか、とにかく落ち着きがない様子で“恥をかく”。
 哲司さんの朗読でも、その違和感が良い感じに表現されていて、最初は落ち着いた様子で戸田の件を話す和子だったけれど、戸田の家に行くとなったあたりから、途端に落ち着きのない女性へと変貌する。この気味悪さを前半は座り、後半の戸田宅への訪問を語り出すときに歩き回るという形で表現していらっしゃったなぁと。座っていると、落ち着いた声なのだけれど、歩き回っている間は和子がずっと慌てていた。

 

▼後半「グッド・バイ」

 休憩を挟み、再び哲司さんが登場した。スーツのジャケットは脱いでいた。照明暑かったのかな? それともそこも表現の一種なのだろうか。

 本作は、田島とキヌ子のやり取りが面白い作品なんですが、それを哲司さんおひとりでしっかりと演じ分け、面白く仕上げていたのが素晴らしかった! 田島に入れ知恵をする文士の不良っぽさ、雑っぽさも好き。朗読ですが声、演技、立ち振る舞いなどから登場人物の感情が感じられた。鴉声のキヌ子の声に最初は笑ってしまったけど、話が進むにつれて「キヌ子の声ってこんな感じだったのかなぁ~」なんて思っていました。

 最後「未完」といった時の哲司さんの声は、残念そうな感じでした。作品が永遠に未完というのは、中身とは違い儚さを感じる。続きが気になるとおっしゃっていたけれど、わたしも気になります……。キヌ子かわいいもん。

 

▼舞台上での哲司さん
 読み終わると、ぺらりと台本となった紙を放る仕草がたまらない。題字「恥」で1枚、作者「太宰治」で1枚、それ以降は複数行なので物語の合間合間で紙が落ちる音がする。これって「太宰を聴く」の決まった演出なのだろうか。さりげない仕草なのに、格好いいし、紙のすれる音が心地よい。
 前述したとおり、物語の場面に応じて座ったり立ったりする。座っている時も声や仕草を場面によって変化させていました。
 例えば和子の手紙を読む間は、座っていて、落ち着いた口調でずっしりと構えつつ、まるで手紙を読んでいるかのように台本を見ていた。一方で、菊子さんへの話しかけになると、座ったまま姿勢を整える。これは和子の口調から考えた性格をイメージしたように感じた。あと座っている間は足がちらっと見えるんですよね。いいね、最高だよ。へへ。
 「グッド・バイ」は約40分と「恥」に比べ、長め。しかし登場人物が「恥」に比べて、もれなく全員アクティブ! ということで、ほとんど歩き回っていました。また「恥」に比べ、表情もころころ変わる。田島、お前おもろいな。

 

▼台本となった紙
 前述した通り、読み終わると一枚そしてまた一枚と落とされる台本となった紙。これは休憩中や終演後に手前に落ちているものだけ、自由に見ることができました。そこには、おそらく哲司さんが書かれたであろうメモ書きなどがあったので、確認できた範囲で記載します。文字は丸みがあって可愛かった。

 

○○SE
⇒SE(効果音)が流れる部分に書かれていました

単語に囲い
⇒強めにいう箇所(例:「恥」の“滅っ茶、滅茶”)と、複数の単語が連なっている箇所(例:「グッド・バイ」の“ダンス・ホール。喫茶店。待合。”)は、ペンで囲われていた

うろうろ・歩
⇒歩き始める箇所に

カギ括弧の色づけ
⇒ぱっと見たときにすぐ演じ分けられるように、ということなのか、蛍光ペンなどで色づけされていました。確認できたのは、「和子/キヌ子 → ピンクの蛍光ペン」「田島 → 青の蛍光ペン」「文士 → 黒のペンでなぞり、括弧を太文字に」といった感じ。戸田などは確認できず

ふりがな
⇒「拝復」の2文字、「非美人」の非にふりがな

 

 駆け足で書きましたが、とっても楽しい時間を過ごすことができましたし、なにより太宰治の作品に久しぶりに触れることができて、やっぱり凄いと思いましたよ。

 太宰治の作品は、青空文庫にて無料で読むことができます。もちろん今回哲司さんが朗読した「恥」と「グッド・バイ」も読めますので、興味があるという方はぜひ見て下さいね。

 

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配布物のなかには、これまでの開催内容が書かれていましたが大杉漣さんと蟹江敬三さんのお名前が。会いたいひとには会えるときに会いに行くのが良い

 最後にしょうもない話をしますが、これまで声優さんの朗読会は何度か参加してきましたが、俳優さんの朗読会は初めての参加……ということで、気合い(と無事到着できるかという不安)で2時間もまえに到着してしまいました。行きはバスに乗ったのですが、運転手さんが最初に名乗っていたのが驚きです。都バスより印象がぜんぜん良いのだ、(たぶん)小田急バス

 

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会場近くにて。祈った